小さいアルがぬいぐるみ抱いて寝てたらかわいいよねって話です
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失礼します、と囁いて、ソフィアは無人の部屋に入り込んだ。マホガニーの机の上に、確かにアルが取ってきて欲しいと頼んでいたものが置いてある。それを拾い上げて踵を返し、部屋を後にしようとしたとき、ソフィアの視界に懐かしいものが映った。
小さなテディベア。ソフィアがまだアルの「お目付け役」になるより前、もっと二人が小さかった頃。
こどものアルは、寂しいとき、悔しいとき、やるせない気持ちを抱えたときに、このテディベアを抱いて眠っていた。色あせたテディベアはよく膨らんでいて、綿を詰め替えられているのがわかった。
かたわらには花の飾り。テディベアに込められた思い出は、アルのものだけではない。幼いアルのために拙い子守唄を歌ったソフィアの思い出もそこにある。つぶらな瞳を見つめて、胸にじんわりと広がる感覚を噛み締めていると、遠くから、聞き慣れた大事な人が、自分を呼ぶ声がした。