LV70クエ「紅蓮のリベレーター」のところ
スタッフロールが終わってポルタ・プレトリアに戻ってきた自機の話です
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ポルタ・プレトリアが、拍手と喝采で溢れている。アラミゴの奪還がついに成ったのだ。この興奮は、しばらく冷めそうにない。
過去の記憶のないニニシャには、祖国を奪還したいという人々の思いを理解することは難しく、その点についてはいつまでも雲をつかむようなことばかりしていた気がする。それでも、虐げられる人々を見て、国を奪われる者の絶望を知ることができた。そして、自分の大切な、尊い人々のために、何より自分の信念のために、走り抜けてきてよかったと、この思いをずっと大事に、どこまでも自分の旅に連れて行こうと思った。
今、ニニシャはラールガーズリーチに向かうため、ポルタ・プレトリアを発つところだ。リセが、仲間たちに話があるから付き合って欲しい、と言い出したのだ。ニニシャには、彼女が何を言い出すかわかっているし、他の面々もわかっているだろう。
「……え?」
そんなことを考えていたら、覚えのない感覚がニニシャを襲い、ニニシャは立ち止まった。
頭の奥か、肚の中か、それとも両腕か両足か。どこかは全くわからないが、自分の中で、ぷつりと糸が切れたような感覚があったのだ。
アラミゴ王宮での激戦の影響が今更出てきたのだろうか。きちんと治療は受けたはずだが。目を閉じて精神を集中させ、体の異常の有無を確かめる。
頭の中でくぐもった音が響いた。
どこかから聞こえた音ではないのに、ニニシャは東の方角を振り返った。真っ青な空に、アラミゴの城塞が堂々とそびえ立っている。
(ああ、これは)
ニニシャは自らの胸に手を当てた。
帝国の侵攻を退け、エオルゼアの英雄と呼ばれるようになったものの、実際のところはまだ何も知らない駆け出しの冒険者に過ぎなかった頃。あの頃からずっと一緒に歩いてきたものが、失われていく感覚だった。
その感覚との別れに、自分が言葉をかけても仕方がないかもしれない。それでも、ニニシャは祈らずにはいられなかった。
「ニニシャ? どうしたの」
リセの声がした。今行きます、と声を返すと、アラミゴの城塞――空中庭園に背を向けて、もう一度目を閉じて、心の中で唱える。
どうか、その眠りに安らぎがありますように。
頭の中で響いた音――竜の咆哮は、先にも後にも今の一度きり、もう響くことはないだろう。かの竜の眼が自分に与えた力は、きっと永遠に戻ってこない。
(おやすみなさい。ニーズヘッグ)
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二人目の蒼の竜騎士として、ニーズヘッグとの繋がりが断たれるのをヒカセンが感じ取っててもいいんじゃないかな~と思って書きました。エーテルの残滓もないって話だったけどほらヒカセンには超える力があるから(無理やり)
ラーヴァナの時は「蛮神の祝福の前には役に立たないから足手まといにならないように待つ」って言ったニャンさんの潔さというか割り切りの早さがものすごく好きなんですが、神龍のときは自分の力でどうにもできないことに対する忸怩たる思いがあったのかな~などと思ったりしています。
読んでくださった方ありがとうございます!